著者はバンコク特派員としてカンボジア内戦を報道してきたジャーナリスト.カンボジア現代史の研究,特にポル・ポト政権の数年やクメール・ルージュの内実については内戦中に一次史料の数多くが失われたこともあってあまり進んでいない.またベトナム戦争や中国へのまなざしの違いによってポル・ポト政権賛美を行ってしまった研究者もおり,ポル・ポト政権についてはいまだにジャーナリズムとアカデミズムの間の壁は高くはない実情がある.本書も可能な限りの註をうつなどある程度の学術的体裁を持っており信頼に値する概説書であろう.とまれ,暴挙としかいいようのないポル・ポトの<革命>が侵攻していたのは1970年代の半ば,という現実は直視しておいたほうがよい.