鈴木真哉『戦国鉄砲・傭兵隊―天下人に逆らった紀州雑賀衆』

戦国期の雑賀衆を論じたまっとうな本。史料もきちんと使っており、ビブリオグラフィも整備されている。いっそ注がついていないのがもったいないと思うくらい。残念なことに新書の悪い癖で題名が適切でない。

著者の言うとおり雑賀衆を扱う専論はあまりなくて、理解がやや俗説に近いところにとどまってしまっていた観はある。たとえば本 願寺との関係がそれで、雑賀衆はかならずしも護法の立場にたって一貫して戦国期を戦ったわけではないという指摘がなされる。実際、鈴木孫一は後年は豊臣氏についている。これは雑賀衆内部での社会結合のあり方や雑賀惣中を構成する五郷間の関係性も影響しているようである。

一読した限りでは、研究はまだ緒についたばかりで、鉄砲がどのようにして移入されたかなどはまだ考察の余地があろう。さらに根来衆と雑賀衆の関係も問題で、そもそも根来衆は根来寺衆徒である。近年まで両者を同一視する議論がたえないが、根来寺は新義真言宗であって浄土真宗ではない。著者の目はこのあたりにも行き渡っており好感がもてる。ただ願わくば新書ばかりでなく専論ないしは雑誌論文を書いて欲しい。


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