メディアリテラシーを考える

ゼミがおもしろくない。基礎知識にかける、ということは全くの事実であるが、議論の不活性も充分に効い ている。週に1時間半ではとてもではないが発表前の事前知識の収集もおろそかになる。むしろ週1度みんなが顔を合わせることを重要視して、事前にみんなの 基礎学習などをメールでお互いに交換する位した方がいいように思う。原稿を読むだけの発表スタイルもよくない。せめて発表者は、「次に……をご覧くださ い」くらいの指示を出さないと発表者と聞いている者の関係は薄れ、発表自体に興味がないと思わせることになる。大学での研究会のあり方は様々であろうが、 ここまで大衆化が進んだ以上、そしてここまでネットワークが発達した以上、もっとやりようは考えられると思う。研究室はその専門知識のデータを社会に提供 すべきだと思うし、また教授もネットワークを活用して、うまく介入するべきである。

最大の提案は、研究会の最初の数時間はメディアリテラシーの基礎教育と、プレゼンテーション技術、ディスカッション技術の教育に当てるべきであると いうことである。はっきりいって学生は参考文献の書き方も、どの雑誌に何がのっているか、ということを調べる技術ももっていないといってよい。ここでまず 効率のよい調べ方を教えておかないと、むだな探索に労力をかけ、研究それ自体の意欲が衰えていってしまう危険性がある。また研究者は往々にして、ビジネス 書を軽視しがちであるが、たとえば日経文庫などで提供されるさまざまな議論の仕方、発想法、セールストーク、データ管理、職場内教育などの書物は、効率を 目指すビジネスの世界であればこそ、非常にまとまっており実用的かつ有用な知識を与えてくれる。もちろんビジネス系の「知的……」などの古典解説書や歴史 をわかったようにさせる書物は危険ではあるが、ビジネスの「方法」は学んでおいて損はない。

とりあえず様々な文献があるという楽しさをしることが重要だ。研究会以前では、レポートを単一の書物に拠り、その書物のよ要約をつくることと誤解している人があまりに多い。せめてブックレポートとレポートと論文の違いくらいわきまえさせることが必要だ。

ここに有用な書物がある。

  • 河野哲也『論文・レポートの書き方入門』慶應義塾大学出版会,2nd ed.,1998

この書物はブックレポートからまず作ってみよう、ということで作りながら学ぶ、という実践的な書物であり、単なるレトリックの問題のみを扱った書物や、研究の方法論といった小難しさをクリアしている書物である。一度使われることをお勧めしたい。

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