前後に薄く、中に濃いといった感じである。著者自身の言葉通り、人物を感覚的に捉え活写している。「小右記」の小松宮右大臣などがとても面白い。それから近衛家の祖が後白河院の「愛物」であったことも今更知った。頼長のみを色々詮索していたのだが、院政期という時期特有のものがあるはずである。あきらかに中世男色史を寺院内のみで見ることの誤りを指し示すものであろう。ともかく。道長の著述はさすがに多いが、前後にもうまく手を伸ばしており、適切な入門書といったところであろうか。最近、日本史関係の専門書をあまり読まぬ身には反省ともなり、刺激ともなった。