小野博『バイリンガルの科学』

大人は既に考える道具として「母語」を持っている。故に小さな子供も日常会話さえできれば、自分同様考える道具としての言語を身につけたと思いこんでしまい、「学習言語」のレヴェルという重要なことを無視しがちである。

本書が最も強く警告してくれるのは最低限の母語を習得せねばならぬということで、中途半端な教育を他言語にわたって親が小さな子供に強要する場合、二言語とも年齢相応のレヴェルを獲得できないセミリンガルになってしまい、将来に渡って知的能力に障害が発生してしまう危険である。

そこから派生して強く主張されるのは、言語が形成され完成するのは小学校六年生程度であるので、小学校三/四年生での出国や帰国には非常な注意が必要であるということだ。できれば小学校一~六年生までは同一言語環境で教育を受けさせるべきであること、もう一点は母語習得後は、母語の能力レヴェルと学ぼうとする言語でのレヴェルに相関関係が認められるということである。すなわち中途半端で幼稚な日本語しか使用できないものは自ずと英語の学習にも限界が発生してしまうと言うことである(日本語が母語で英語を学習しようとする場合)。

日常会話と、正しく美しく専門的な言葉との間には大きな溝がある。すらすらと話せることで幻惑されてはならないこと、逆に慣れだけではダメでモチベーションを維持していかなければならないこと。これは押さえておく点であろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください