グリーグに「春に寄す」というピアノ曲がある。叙情小曲集の一つだ。今日立春を迎えた東京は、いまだ冬の内だ。
ヨーロッパの春はすさまじく美しく喜びに溢れるという。ところが東京では櫻がなければ春を春ともおもわないうちに季節がかわってゆく。なぜだろうか? それは東京の冬は明るいためではないだろうか? 西高東低という言葉を日本人の誰しもが理解するほどにこの時期の天気図はわかりやすく、強い高気圧と空っ風に関東は覆われる。空は抜けるほどに青く、暖かさは少ないとはいえ、常に陽が射している。ヨーロッパ、というよりアルプスより北の冬は暗い。北海から覆われる雲。北ドイツの港市の冬は陰鬱としたものだ。ロストクにいると誰しも暗い空の下、うちよせる海岸の波に想いを馳せるという。風景の輝度の違いは、風物に色合いの違いを与えるのだ。