住志向の史的展開を社会学の立場から追う。郊外型の住志向というあり方を、アメリカと日本でリンクさせながら読み解いてゆく手法は鮮やかだ。そして「郊外」こそが、戦後のあこがれと病理をともに象徴しているという結論は、きわめて説得的である。現在の都心回帰の流れはまったくもって終章「郊外を越えて」が説くところと一致するであろう。
偽物の都心とはりぼての郊外という二項対立の「戦後型進歩的」構図は崩れ、その構図の上に立った強力な「思いこませ」の機能さえも、いままさに崩れようとしている。今後のトレンドを読むためにも近代を知ることは重要である。ニューヨーク万博とオリンピックに始まった時代は、バブルとともに崩壊したのだ。必読。