私は英語が苦手である。特に聞き取りと喋りはできるだけ避けて通りたいと思っている。語学の順序としては聞き取りと喋りは当然読み書き以前にやるべきもので、そうあってこそ初めて読み書きが流暢にできるのである。しかしながら英語を恐れ続けてから十年近いキャリアを誇る私としては、英語に関してだけはそのように考えることはできない。
聞き取りにおいては、tやsなど空気みたいな音が「音」として聞き取ることができない。声門閉鎖音や舌音はわりと強いのだが閉音節が悲劇的である。そうすると、前後の単語の区切りが全く不明確になり、どこまでが単語かがわからなくなる。これはきわめて由々しい問題なのである。フランス語はさらにひどくてリエゾンやアンシェーヌマンでべっとべっととくっつくと言われるが、むしろ規則化されていてわかりやすいし、閉音節が後の母音によって開音節化するのでいくぶん聞きやすい。ところが英語であるとどこでくっついて、どの音が発音されないのかといったことはほとんど経験上の問題であるらしいので、経験したくないと思っているとさらに深みにはまっていくのである。せめて、漢文を読めた日本人のように、英語を読める日本人になりたい。十年間さぼりつづけたのであるから、もはやしゃべる、聞くはあきらめるので、せめて読むだけはできるようになりたいのだ。
で、せめて読めるだけは、と思って勉強しているのだが、単語を発音しないと覚えないというので、まず発音記号を読めるようにしなくてはと思ってひととおり勉強してみた。そうしたら驚くべきことに、私が「そうだ」と思っていた読み方がどうもずいぶんと違うようなのである。どおりで聞き取りがやたらえぐいわけだ。なのでやっぱし野心は高くということでお勉強お勉強。