三の酉の愁雨

珈琲の香りにひたっていた夕刻。喫茶店の窓から外をのぞくと、すでに日は沈み、街路灯の明かりがぼやっと光っていた。ふと雨音が聞こえた。今日は、雲に閉ざされ、寒い日だったが、冷たい雨まで降るとは。気鬱にならないほうがおかしいというもの。

しかし、今日は11月最後の酉の日、すなわち三の酉である。今日を逃せば、一年間お世話になった熊手を戻す機会は1年を待たねばならない。覚悟を決めて、傘もないまま大鳥神社へ向かった。

明るかった。底抜けの明るさがあった。ライトに照らされて、頭上高く掲げられたたくさんの華やかな熊手。あちらこちらで飛び交う三三七拍子。愁雨などはね除ける、人びとのエネルギーを見た。

御神酒を頂戴し、小ぶりの熊手を求める。暖かさがしみた。

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