ハーヴァードの学長を20年弱にわたってつとめた人物による大学商業化への警鐘.大学スポーツと産学連携に関わる諸問題(利益相反など特にバイオ関連で),インターネットを含めた通信教育など社会人教育の問題が論じられる.結論としては短期的利益追求では基礎科学,人文科学などの衰退をまねいてしまうという議論である.また大学教育の質を維持するためにも有害であるという.なぜなら学生が大学・教授・授業を選択するうえで外部性と完全情報という市場メカニズムが正しく働かないためである.日本とアメリカでは大学存立の土壌が違うが,商業化がずっとはやく起こったアメリカでどのような事態が生じたのかを知っておくことは,国立大学の独立行政法人化が進む現在の日本でも重要であろう.