非常に大部の訳書.ウィスキー製造が密造と税法の絡み合いの中で発達してきた産業史そのものであるということがよく分かる.ローランドとハイランド,モルトとグレーンそれぞれが今日に至る事情をこれほど詳細に書いた日本語の書物はないだろう.特にローランドのグレーン・ウィスキーとロンドン周辺でのジンの関係は重要である.グレーンをさらに蒸留してジンを作るのである.良書であるが,読者を選ぶ.固有名詞がいやというほど出てくるので,スコットランド史,イングランド史,さまざまな単位,ウィスキー製造法についての基礎知識がないと読むのが苦痛になってしまうだろう.