古川貞雄, 花ヶ前盛明編『北国街道―東北信濃と上越 』

北国街道は軽井沢近くの信州追分で中山道からわかれ,小諸,上田,戸狩をへて善光寺平に入る.ここで二手にわかれ,一方は松代,一方は善光寺門前を経由し合流.野尻をへて高田,直江津へと至る道のりである.おおむね以前の信越本線の軽井沢以北に等しい.本書は東信,北信と上越を交互に扱うかたちでの編集.双方ともよくまとまっているのだが,二地域平行で一冊なので全体の密度,特に上越の概説史がやや薄くなっている気がする.とはいえ,東と西の政治権力がぶつかり信濃で微妙なバランスを形成している点を重視し,南北朝・室町期を重点的に扱うなど,テーマの選定は秀逸.また武蔵国府が南に偏りすぎ,信濃国府が東に偏りすぎているという問題も,信濃への中央権力の浸透が東山道の西からではなく東から行われたためという仮説を立て,大域的な説明を試みるなど,シリーズ中で地域を大きく捉えている点がよい.

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