表題の越中・能登の全域と高山盆地以北の飛騨を扱う.本巻では東西の道である北陸街道だけでなく南北の道および水運についてもバランスよく記述されている.本シリーズでは従来ひとまとめにされなかった地域をまとめて扱うことがあるが本書もその一冊である.このような場合,各地域ごとに個別の記述に終始してしまい,統一的な地域を描き出すことに失敗する場合が多い.本巻は実にバランスよく,かつ自然に各地域を往き来しており編集の質が高い.これは富山周辺の1郡を除く加越能がすべて加賀藩領であったことも理由となるかもしれない.飛騨もなおざりにはされておらず,高山が近世を通じ現岐阜県域内最大の人口をほこる都市であった背景が丹念に説明されている.