C. ヴェロニカ・ウェッジウッド(瀬原義生訳)『ドイツ三十年戦争』

三十年戦争を概説的、かつ物語的にボリュームをもって読める日本語の本は、実はほとんどなかった。ウェッジウッドのこの本は、ずいぶん前から読みたかったのだが、英語を読む労力をおしんでいた。人物描写といい、背後の思想的枠組み、そしてそのバランスといい、戦間期に書かれたものとは思えない。充実した読後感である。

田中義成『南北朝時代史』

大正年間に書かれた本で文語文だが、すこぶる読みやすい。私は『足利時代史』を持っているのだが、なんで一緒に買わなかったのか悔やまれる。いまや絶版である。このやたらと込み入った時代を対象として、かつ当時の政治体制下で、これほどまとまった本があったというのがすごい。南北朝正閨論における著者の態度は史家の鑑。