カテゴリー: 読了
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所編『図説 アジア文字入門』
宮本一夫『神話から歴史へ』
福田千鶴『御家騒動―大名家を揺るがした権力闘争』
柳沢小実『スカンジナビア・ノスタルジア』
舘野鏡子『緑野菜』(上下巻)
滝本寿史, 名須川溢男編『三陸海岸と浜街道』
『Mac OS X 10.4 Tigerパーフェクトガイド』
永久保陽子『やおい小説論―女性のためのエロス表現』
博士(文学・専修大学)学位請求論文。
やおい小説研究にまがりなりにも入りかけた人間として、やおい小説研究はついに博士号が出るまでになったかという感慨をいだかざるをえない。しかも本書は、これまで多々出版されてきた読者と作者をめぐる社会学的分析、クラスタ的分析ではなく、テキスト分析の方法による論文である。これまでの作者・読者をめぐる社会的コンテクストに準じての議論の多くは、本当にやおい小説=テクストを読んだのか?という疑問を抱かせるものであったし、読んでいたとしても安直な思いつきじゃないか?と疑わせるような結論に失望せざるをえなかった。そして文学的な視角からはほとんど無視されてきたのがやおい小説であり、やおい小説をめぐる研究は、社会学の独壇場であったといえよう。本論文は浅薄な社会批評とは一線を画し、方法としてのテクスト批評にかなり自覚的である。当然、やおいマンガとやおい小説の差異についても考慮が払われている。みごとに読者とテクストの関係において果たされるやおい小説の機能を説得的に描出している(<受>とか<攻>、あるいは「やおい小説」そのものを知らない方は以下は読んでも意味不明だろうが、あえて記しておきたい分析なので書いておく)といえよう。