栗本薫『豹頭王の行方』(グイン・サーガ96)

今回は話が動いた.もっとも動いただけで進んだわけではない.96巻にしてマイル・ストーン.こりゃ100巻じゃ絶対に終わらない.ついでにわかったこと.私はほぼ2ヵ月おきに物語欠乏症になるのだが,これはグインが出た後だ.隔月刊という間は文庫のシリーズとしてあまりに絶妙.

ジョゼフ・ボスキン(斎藤省三訳)『サンボ―アメリカの人種偏見と黒人差別』

訳が生硬で読みにくかったので斜め読み.原文では社会史として非常に良くできたモノグラフであったのだろうことがわかる.しかし訳者の差別反対の思いが強すぎるのか,日本語訳でかえってイデオロギー性が強く出てしまい引用部のおもしろみや意味が分からなくなっている気がする.

山崎雅弘『歴史で読み解くアメリカの戦争』

手際よくまとまっていて非常に読みやすいが,きちんとした国際政治学の本ではない.レポートとしてできがよい,といった感じか.なにより参考文献が適当すぎる.読み物.

サラ・フィッシャー, レイチェル・ストール(杉原利治, 大薮千穂訳)『アーミッシュの学校』

アーミッシュはもちろんあの伝統主義の集団である.近代国民国家における国民統合の軸の一つに公教育がある.当然公教育の義務化とアーミッシュの外部社会との関わりの忌避は衝突をおこす.そのあたりのことも絡めつつ,アーミッシュ自身の教育者によって淡々と語られた書物.訳者としてはアーミッシュに持続可能な社会のありかたを見ている.しかし,この集団が第三世界の国々にいたとしたらどうか? やはりネイションビルディングを阻害する集団としてみられてしまうのではないか.現代のアーミッシュがまがりなりにもそのアイデンティティを維持し,かつ社会的にも暴力的な紛争を起こさずにすんでいるのは,合衆国にいるから,という点が大きいのではないか.その意味で現代アーミッシュの存在は近代合衆国の産物であるとさえいえるのではないか.

神崎彰利, 福島金治編『鎌倉・横浜と東海道』

街道の最も街道らしいところ.鎌倉道から東海道までネタに事欠かない.そのうえ箱根や小田原地域を除いた「相武」地域を充分に描き出すという難題に挑戦し,成功している.いざ考えてみると今日の神奈川県域の中核部というもののきちんとした印象はない.せいぜい相模原の軍都化くらいだろう.神奈川県に住んでいる人におすすめ.

2004年8月第2週の読みたい本
































2004年8月第1週の読みたい本
























2004年7月第4週の読みたい本

















































2004年7月第3週の読みたい本